新人戯曲賞とは?受賞作品まとめ

これから劇作家として本格的に活動しようという人なら誰もが通ることになるのが新人戯曲賞です。

ここでは新人戯曲賞とはどういう賞なのか、そしてこれまでにどのような作品が新人戯曲賞を受賞したのか見ていきます。

また、これから新人戯曲賞に応募しようと考えている方のために応募資格もまとめましたのでぜひご覧ください。

それでは本編に入ります。

目次

新人戯曲賞とは?

新人戯曲賞とは日本劇作家協会(JPWA)によって開催される賞です。

新人戯曲賞という言葉にもある通り、新人戯曲賞は主として新人劇作家の登竜門となるべく設立された賞です。

1995年に第1回新人戯曲賞が開催され、今年で第30回目の開催となりました。

新人戯曲賞では1次審査と2次審査を経て受賞作品が決定する流れになっています。

第30回目新人戯曲賞については現在審査中なので続報に期待です。

日本劇作家協会(JPWA)とは?

新人戯曲賞のこれまでの受賞作品を紹介する前に、主催団体についても知っておきましょう。

先述の通り、新人戯曲賞を開催しているのは日本劇作家協会(JPWA)です。

その日本劇作家協会が設立されたのは1993年のことですので、それから間もなくして新人戯曲賞が始まったといえます。

日本劇作家協会の活動は新人戯曲賞の他にも様々な活動を行っており、劇作家の権利に関する活動、劇作家の交流、海外への日本戯曲の紹介、演劇雑誌の出版などあまたに渡ります。

日本劇作家協会への入会にあたって入会資格はありません。

自らを劇作家であると自認する人であれば、入会金と年会費さえあれば誰でも入会できます。

新人戯曲賞受賞作品まとめ

ここまで新人戯曲賞とは何なのか、新人戯曲賞を主催している日本劇作家協会とは何者なのかについて紹介していきました。

ここからはこれまでに新人戯曲賞を受賞した作品について第1回新人戯曲賞受賞作と直近で新人戯曲賞を受賞した10作品について紹介していきます。

第19回新人戯曲賞までは作品に対する評価(口コミ等)を、第20回新人戯曲賞からは審査員からのコメントを併せて紹介していきます。

ただし、第28回新人戯曲賞(2022年)については受賞作がなかったため、該当回の作品については紹介しません。

直近の開催となりました第30回新人戯曲賞(2024年)については10月現在、審査中ですので続報が待たれるところです。

職員室の午後(第1回新人戯曲賞)

最初に紹介するのは第1回新人戯曲賞(1995年)を受賞した「職員室の午後」です。

本作は長谷川孝治さんによって手掛けられた作品で、20年以上前の東北地方のとある県立高校を舞台にストーリーは展開されます。

帰宅許可を心待ちにする教師、気の進まないイベント、そして喫緊の懸案事項である生徒の処分への対応と悩みが山積みなところから始まります。

本作については「1990年代の演劇の中において関係性の演劇の模範を提示したといってもよい」などの評価がなされています。

本作は以後スタジオメタによって改良を重ねられながら上演されていきました。

長谷川孝治さんは劇団「弘前劇場」で活動したと共に、青森県立美術館舞台芸術総監督も務められました。

クラッシュ・ワルツ(第19回新人戯曲賞)

第19回新人戯曲賞(2013年)を受賞した「クラッシュ・ワルツ」は刈馬カオスさんによって手掛けられた作品です。

本作はとある交差点で起こった不幸な事故を巡って交差するはずのなかった人間関係が生まれ、ワルツのごとくめぐりめぐるノンストップ・トラフィック・サスペンスになっています。

本作については「傷つけないように振舞おうとすればするほど狂気の殺意に見えていく人間の姿に恐怖した」など、ヒリヒリとした印象の評価がなされています。

刈馬カオスさんは刈馬演劇設計社の代表を務めており、本作の他に「異邦人の庭」、「モンスターとしての私」、「誰も死なない」、「マイ・フェイバリット・バ――――――ジン」などの作品を手掛けました。

また、刈馬カオスさんはワークショップやアウトリーチ活動にも力を入れると共に、マンガの原作協力など、幅広い分野で活躍されています。

狭い家の鴨と蛇(第20回新人戯曲賞)

第20回新人戯曲賞(2014年)を受賞した「狭い家の鴨と蛇」は角ひろみさんによって手掛けられた作品です。

本作はゲリラ豪雨がもはやゲリラですらなくなった未来に土砂崩れを機に解散した集落に残された父と高校生を中心にストーリーは進行していきます。

本作は方丈記からの想起をもとに現代劇に起こされており、いわば「無常の節電ファンタジー」として仕上がっています。

本作について、審査員からは「登場人物たちの切なさ、哀しさが書けており、終わり方が清々しい。」と評価されました。

角ひろみさんは本作の他に「あくびと風の威力」、「囁谷シルバー男声合唱団」などの作品を手掛けました。

畳と巡礼(第21回新人戯曲賞)

第21回新人戯曲賞(2015年)を受賞した「畳と巡礼」は象千誠さんによって手掛けられた作品です。

本作ではかつて造船業で栄華を誇った瀬戸内海の港町を舞台に失踪した父を巡るストーリーが展開されます。

本作の中ではねじれる家族関係から外国人技能実習生、戦後処理問題など、日本が抱えている様々な問題も取り扱われています。

本作について審査員からは「面白い会話の背後には日本の戦争の歴史の語り」があると評価されました。

象千誠さんは劇団「対岸ビバーク」で活動しており、本作の他に「広島ジャンゴ」、「顔も、声も」などの作品を手掛けました。

触れただけ(第22回新人戯曲賞受賞)

第22回新人戯曲賞(2016年)を受賞した「触れただけ」は南出謙吾さんによって手掛けられた作品です。

本作ではさほど重要ではないかもしれないが切実な不安を薄くつながった3人のいびつな人間関係の中で描いていきます。

本作について審査員からは「繋げることに終着していないところにさすが今の時代を描けていると感じた」と評価されました。

南出謙吾さんは「劇団りゃんめんにゅーろん」で活動しており、本作の他に「終わってないし」、「青いプロペラ」などの作品を手掛けました。

うかうかと終焉(第23回新人戯曲賞受賞)

第23回新人戯曲賞(2017年)を受賞した「うかうかと終焉」は大田雄史さんと出口明さんによって共同で手掛けられた作品です。

本作は取り壊しが決まったとある学生寮を舞台にストーリーは進行します。

そこにある落書きはかつて学生寮にいた者たちが残していったもので、そこでたむろしている5人の学生もまた学生寮から徐々に立ち去っていき、「うかうかと終焉」していきます。

本作について審査員からは、「反対運動に敗れた最後の5日間、その間の馬鹿馬鹿しい出来事に青春のきらめきを感じられて良い。」と評価されました。

なお、本作は2023年に映画化も果たしました。

大田雄史さんについては社会人演劇ユニット「芝熊」で活動されています。

余談ですが、本作の制作にあたっては京都大学の吉田寮が参考になったといわれています。

鎖骨に天使が眠っている(第24回新人戯曲賞受賞)

第24回新人戯曲賞(2018年)を受賞した「鎖骨に天使が眠っている」はピンク地底人3号さんによって手掛けられた作品です。

本作はとある一家のお通夜から始まります。

見習い納棺師が失踪したと思われた一家の息子にして親友でもある人物と再会を果たすと喜びを分かち合うのかと思えば過去の忌々しい事件で友情が破綻していきながらストーリーは進みます。

審査員からは「現在と10年前を同じ場所で展開するところがうまい」、「シリアでの拷問シーンが面白い。演出家の数だけ様々な演出が生まれるところだ。」などと評価されました。

ピンク地底人3号さんは本作の他に、「黒いらくだ」、「わたしのヒーロー」などの作品を手掛けました。

泳げない海(第25回新人戯曲賞受賞)

第25回新人戯曲賞(2019年)を受賞した「泳げない海」は三吉ほたてさんによって手掛けられた作品です。

本作は現代社会における子供の問題を巧みに生き生きと描いた作風になっています。

審査員からは「計算が苦手な学生を描くのに別の授業に影響が出ているシーンを持ってくるところが面白い」、「自身の高校時代を思い起こさせる風景」などと評価されました。

三吉ほたてさんは本作の他に「屋根裏」という作品も手掛けました。

いびしない愛(第26回新人戯曲賞受賞)

第26回新人戯曲賞(2020年)を受賞した「いびしない愛」は竹田モモコさんによって手掛けられた作品です。

本作はコロナ禍でただですら経営が厳しかったところ、存続危機に見舞われる小さなふし工場の事務所を舞台に繰り広げられます。

工場をきりもりする次女と、体の不自由はあれど快活な姉の埋まらない溝、分かり合えない人が隣にいる息苦しさはありながらもどこか愛おしさを感じる作風になっています。

審査員からは「どの登場人物も魅力的で、面白く読んだ。コロナ禍のことをよく描いてくれた。」と評価されました。

竹田モモコさんは本作の他にも「二十一時、宝来館」、「へちむく家族」などの作品を手掛けました。

あなたがわたしを忘れた頃に(第27回新人戯曲賞受賞)

第27回新人戯曲賞(2021年)を受賞した「あなたがわたしを忘れた頃に」は髙山さなえさんによって手掛けられた作品です。

本作は「僕が妊娠した水曜日」、「私は金曜日に壊れる」、「月曜日に看護師は恋をする」の3本の物語から構成される1人芝居になっています。

「僕が妊娠した水曜日」では妊娠を知った夫の喜びと戸惑いが描かれます。

それに続く「私は金曜日に壊れる」では先ほどとは反対に妊娠できなかった妻の苦悩が描かれ、最後に「月曜日に看護師は恋をする」ではとある看護師の半生が描かれます。

テイストが全く異なるように見える3つの物語ですが、どの物語も幸せと切なさが入り混じるテイストになっているところが特徴的です。

選評の中で本作について審査員から「おもしろい感覚が満載。ただし、せっかくオムニバス構成になっているのだから前の場面を超える勢いがあるとなおいい。」と評価されました。

髙山さなえさんは現在劇団「髙山植物園」で活動しており、本作の他に「トリプルビル〈HAKOとタカヒロ〉」などの作品を手掛けました。

檸檬(第29回新人戯曲賞受賞)

第29回新人戯曲賞(2023年)を受賞した「檸檬」は海路さんによって手掛けられた作品です。

本作品は「半年後に口が消えるので、それまでにあなたを殺そうと思ったんです」という衝撃的な始まり方をします。

作中、主人公となる女性はこれまで通り何気なく恋人や友人、家族に囲まれ幸せな生活をしていましたが、「口が半年後になくなる」という驚愕の事実からどんどん狂っていく人間模様が描かれています。

選評の中で海路さんについて、審査員から「将来性が期待される言葉のセンスと独創的な世界観を展開しており、受賞に賛同した。」と評価されました。

海路さんは現在、劇団papercraftで活動しており、以後は本作の他に「空夢」などの作品を手掛けました。

新人戯曲賞の応募条件は?

ここまで新人戯曲賞の受賞作品を見てきましたが、読者の中には新人戯曲賞の応募条件について気になっている方もいるかと思います。

応募可能な作品は1作品までで、募集時期までの過去1年間に書かれた作品が対象となります。

なお、上記の条件を満たしていれば上演済みのものであっても応募は可能です。

ただし、同時期に他の戯曲賞へ応募することはできませんのでご注意ください。

また、過去に佳作賞以上を受賞していた作品や外国語の作品を和訳したものなどについても新人戯曲賞の審査対象外となりますのでその点にも留意してください。

年ごとに個性に溢れた新人戯曲賞受賞作品たち!

今回は新人戯曲賞とこれまでに新人戯曲賞を受賞してきた作品を見ていきました。

新人戯曲賞受賞作品はその年ごとに個性に溢れた作品になっています。

青春を描いたものからヒリヒリするサスペンス、哀愁のある作品と、受賞作品の特徴をあげるときりがありません。

中には「畳と巡礼」のように現代の日本が抱える問題を扱ったものや、「いびしない愛」のように世界中に猛威を振るった新型コロナウィルスに見舞われた世界をリアルタイムで取り扱った作品など、受賞当時の時世をよく表した作品も見受けられました。

2024年10月現在において第30回新人戯曲賞受賞作品は未定ですが、どんな個性を持った作品になるのか、楽しみなところです。

ぜひ、この機会に新人戯曲賞を受賞した個性豊かな作品や、新人戯曲賞受賞者の作品を見てみませんか?

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