シェイクスピアの生涯と代表作

演劇の偉人といえばどんな人物を思い浮かべるでしょうか。

サミュエル・ベケット、別役実、ヘンリック・イプセンなど挙げればきりがありません。

しかし何と言っても避けては通れない偉人がいます。

その名もウィリアム・シェイクスピアです。

今回はそんなウィリアム・シェイクスピアについて、シェイクスピアが辿った人生や代表作について解説していきます。

目次

シェイクスピアの生涯

シェイクスピアや彼の手掛けた作品は言わずもがな有名ですが、シェイクスピアの辿った生涯については知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこでこのセクションではシェイクスピアの辿ってきた生涯について解説していきます。

シェイクスピアはどこで演劇との接点を持つに至ったのでしょうか。

早速みていきましょう。

シェイクスピアの前半生

シェイクスピアが生を受けたのは1564年のことでした。

公式の出生証明が残っていなかったため、詳細な日付までは今でも明らかにはなっていません。

そんなシェイクスピアの生まれた一家は父親が市長を務めるほどの裕福な一家でした。

一家にはウィリアム・シェイクスピアを含め、8人の子どもがいたとされています。

しかし、裕福だったのつかの間で、父親は羊毛の闇市に関与した疑いがかけられ、市長職をはく奪されます。

その後は地元ストラドフォードのグラマースクールで学んでいたと考えられていますが、グラマースクールの学生簿も残っていないため、真偽のほどは不明です。

当時、グラマースクールではラテン語教育の一環としてラテン演劇の教育も行っており、シェイクスピアの最初期の作品にラテン演劇作品との類似性がみられることが現時点での根拠です。

時は流れて1582年、シェイクスピアが18歳のときに26歳のアン・ハサウェイという女性と結婚します。

結婚後、3人の子どもを授かりますが、その内の1人は10代に入ったばかりの1596年に亡くなってしまいまいした。

シェイクスピアが結婚してからは1592年に劇壇に登場するまでの間の記録が残っておらず、その間何をしていたのか、どこで劇作家としてのキャリアが始まったのかは謎に包まれたままです。

これがいわゆるシェイクスピアの「失われた年月(ロスト・イヤー)」と呼ばれる期間です。

諸説ありますが、シェイクスピアの「失われた年月」の期間中はランカシャーで教職についていたという説が一部の研究者から唱えられています。

シェイクスピアの後半生

シェイクスピアが表舞台に再び出てきたのは1592年のことです。

この頃にはすでにロンドンに進出し、俳優業を営む傍ら脚本執筆も手掛けるなどして演劇界に身を置いていました。

この時点で既に同業者から中傷される程度には名声を得ており、ロバート・グリーンの著書「三文の知恵」でもシェイクスピアを揶揄する記述がなされています。

1594年になるとこれまでの俳優業と劇作家の兼業に加えて宮内大臣一座(Lord Chamberlain’s Men)という劇団の共同所有者にもなりました。

さらに時を同じくして劇壇の本拠地だった劇場グローブ座の共同株主にもなりました。

さて、この劇団は1603年にジェームズ1世が即位した際に新国王となったジェームズ1世が自ら劇団の庇護者となることを約束されたことで国王一座へと改称され、シェイクスピアの劇団の名声はさらに高まっていきます。

再び時間軸を戻すと1596年、劇団の成功でシェイクスピア家はジェントルマンの地位を得たことでシェイクスピア家にも栄光をもたらします。

1590年代後半からがいわばシェイクスピアの絶好調だったと言われる時期で、1598年にはシェイクスピアが俳優としても活躍していた記録が残っています。

国王一座に改称してからは脚本執筆を行いつつ、自ら手掛けた作品で役者として出演するほどでした。

「ハムレット」の先王の幽霊などをシェイクスピア自身が演じたとされています。

ロンドンで大成功を収めたシェイクスピアですが、1613年にはストラトフォードへ引退したと考えられています。

その翌年の1614年、シェイクスピアは51歳で生涯に幕を下ろしました。

シェイクスピアの作風

シェイクスピアを含め、16世紀に書かれた脚本は全体的に他の劇作家の作品をもとにしたものや、過去の説話や歴史資料文献に手を加えたようなものが目立ちます。

例えば「ハムレット」は既に現存していない先行作品を改良したもの、「リア王」については同じ題名の過去作を脚色したものと考えられています。

「ハムレット」の基となった作品は「原ハムレット」と呼ばれていますが、作者等不明です。

また、シェイクスピアの作品においても歴史上の出来事を基にした史劇も多く、古代ローマやギリシャ、近世イングランドを舞台とした作品群で分けられます。

古代ローマ、ギリシャについてはプルタルコスの英雄伝を主として参考にしていたと考えられています。

近世イングランドについては「年代記」が参考にされているとされ、史劇ではないものの「マクベス」や「リア王」もそれらの作品群の一部です。

なお、シェイクスピアの死後になってシェイクスピアの作品は悲劇、喜劇、史劇のカテゴリー分類がなされれることとなりました。

シェイクスピアの作品について俳優の観点で磨き上げられたフレーズや語彙、演技などがみられるものの、劇作法についての専門的な方法論が欠如しているという評価もあります。

シェイクスピアの4大悲劇

シェイクスピアを語る上で避けて通れないのが4大悲劇と呼ばれる作品群です。

シェイクスピアの4大悲劇と呼ばれる作品群には「ハムレット」「マクベス」「オセロー」「リア王」があります。

ここではそれぞれの作品について紹介していきます。

ハムレット

諸説ありますが、「ハムレット」は1601年ごろに執筆されたと考えられています。

先述したように本作は作者不明で既に現存しない「原ハムレット」がもとになっていると考えられていますが、さらに辿っていくと北欧伝説にたどり着きます。

12世紀にデンマークの歴史家によって書かれた「デンマーク人の事績」にアムレートの武勇が言及されており、このアムレートこそハムレットのモデルとなった人物です。

本作は5幕構成となっており、本作の行数は4000行とシェイクスピアの作品の中では最長です。

本作は父王の急死(後に後継者となった叔父による暗殺と判明)から物語は始まります。

主人公であるハムレットは復讐を誓うのですが物語が進む中でハムレットの復讐心とハムレットに対する復讐心が交錯することとなります。

To be, or not to be, that is the question.」という名言がありますが、当初は「世にあるか、あらぬか、それが疑問じゃ」と訳されたところ、時代が進むにつれて「生きるべきか死ぬべきか」など翻訳者ごとに異なる解釈がたくさん生まれましたが、劇全体としては「復讐をすべきかすべきでないか」というニュアンスが有力です。

マクベス

本作は1606年ごろに執筆されたと考えられています。

先述した「ハムレット」は4000行にも及ぶ長大作でしたが、「マクベス」は対照的にその半分である2400行程度です。

これはシェイクスピアが執筆した作品の中で3番目に短い作品です。

そんな「マクベス」は5幕構成になっており、スコットランド軍の将軍マクベスが戦いの後、3人の魔女と出会うところから物語は始まります。

魔女の予言を聞いたマクベスは自ら使えるダンカン国王を殺害し、王位に就くのですが正気を保つこともままならず暴君へと変貌していきました。

そんなマクベスにやがて彼への復讐心に燃えたイングランドの軍勢が攻め込むこととなります。

本作のモデルはかつて実在したスコットランド王マクベスで、在位期間も1040年から1057年と本作の「マクベス」よりも長期で、なおかつ在位していた時代は下克上が常態化していた上に統治の実績もあったため、劇中で描かれるほどにあからさまな暴君ではなかったと評価されています。

オセロー

本作は1602年ごろに執筆されたと考えられています。

5幕構成になっており、ムーア人の指揮官オセローが本作の主人公です。

オセローと後に妻となるデズデモーナと恋仲になるところから物語は始まります。

2人は紆余曲折を経て結ばれるものの、オセローを嫌っている旗手の流した嘘によってオセローは破滅の道を歩むことになります。

旗手の流した嘘を信じ込んだオセローは不貞を疑い、デズデモーナを殺してしまいました。

旗手の妻が事の顛末を暴露するも彼女は旗手に殺され、後に捉えられた旗手もまた破滅の道を歩むこととなります。

本作はツィンツィオによって16世紀に書かれた「百物語」が基になっており、「百物語」でも登場するデズデモーナとはギリシャ語で「不運な」を意味する言葉です。

リア王

執筆時期は今でも明らかではありませんが、1606年までには執筆されていたと考えられています。

本作も先の3作品と同様に5幕構成となっています。

本作の主役であるブリテンの老王リアは王位を退くことになるのですが、3人いる娘の中で最も孝行している者に土地を与えると言いました。

3人の娘の内、三女(コーディリア)は率直な物言いから怒りを買い、追放されてしまう一方、他の2人は言葉巧みにリアを騙し、やがてリアは長女と次女によって裏切られることをリアは見抜けませんでした。

そんなリアは流浪の身となり、フランス王妃となったコーディリアはフランス軍を伴ってリアを助けるもブリテン軍に敗北することとなります。

本作はブリトン人の伝説の王「レイア王」がモデルとされており、レイア王に関する様々な文献の中で16世紀に書かれた「妖精の女王」ではコーディリアという人物も登場しており、本作と同じ末路を辿っています。

作者不詳の「レア王」という類似作品がありますが、この作品は明るく終わっており、「リア王」と「レア王」の前後関係については研究者によって解釈が分かれるところです。

シェイクスピアの代表作を一挙紹介!

先ほどはシェイクスピアを語る上で避けて通れない4代悲劇を紹介しましたが、それだけにとどまりません。

シェイクスピアを語る上でぜひ知っておきたい代表作を一挙紹介していきます。

ロミオとジュリエット

シェイクスピアが手掛けた作品の中でも「ロミオとジュリエット」はとりわけ有名な作品ではないでしょうか。

本作の制作時期については諸説ありますが、1595年前後までに制作されたと考えられています。

本作は5幕構成にて構成されており、物語はロミオとジュリエットの2人を中心に展開する構成です。

本作はモンタギュー家とキャピュレット家が代々対立しているところから始まるのですが、ロミオは当初別の人物に対して片思いをしていました。

そんなロミオはモンタギュー家の人間であるにも関わらず、気晴らしにキャピュレット家のパーティーにお忍びで参加し、そこで出会ったのがキャピュレット家のジュリエットでした。

2人は両家の和解を期待した修道僧の協力で秘密裏に結婚するも、次々と事件に見舞われ2人は全てを失ってしまいます。

邦題は英語読みの「ロミオ」となっていますが、本作はイタリアを舞台にしていることからイタリア語読みのロメオ(Romeo)と題されることもあり、特にクラシック音楽やバレエの分野でその傾向が見られます。

ヴェニスの商人

本作は1594年から1597年の間で制作された作品と考えられています。

先ほどまで紹介してきた作品は「悲劇」でしたが、本作は「喜劇」です。

舞台は中世イタリアのヴェネツィアと架空の都市ベルモントで、テーマは「借金」です。

中世イタリアを舞台に商取引と恋が繰り広げられるのですが、結婚する友人に金を貸そうとアントーニオは悪名高い高利貸のシャイロックから金を借りたことで後に騒動へと発展していきます。

アントーニオは当初は簡単に金を返せるだろうで見込んでいましたが、なんと彼の船が難破してそうにはいかなくなり、契約書通り「アントーニオの肉1ポンド」を要求される羽目になりました。

タイトルの「ヴェニスの商人」は金貸しのシャイロックではなく、主人公の商人アントーニオのことを指しています。

お気に召すまま

本作は1599年に執筆された作品と考えられています。

本作も「喜劇」に分類される作品の1つです。

本作の執筆にあたって参考にされたと考えられているのがトマス・ロッジの「ロザリンド」という作品で、本作でも「ロザリンド」という人物が主役として登場します。

本作はフレデリックが兄の公爵を追放して爵位を得るところから始まり、その兄の娘がロザリンドでした。

当初はフレデリックに育てられたロザリンドですが、追放されると現公爵の娘と道化を連れて森に出ます。

ロザリンドに一目ぼれしていたオーランドーも自らの運命を切り開くべく森にでます。

その森の中ではやがて様々な騒動が起きることとなるのでした。

「ロザリンド」ではフランスとベルギーの国境付近のアルデンヌを舞台にしていますが、本作ではシェイクスピアの故郷に近いアーデンの森に改変しています。

終わりよければ全て良し

本作は1603年から1604年までの間に執筆されたと考えられています。

しかし、シェイクスピアの生前における講演記録が残っておらず、記録されている限りではシェイクスピアの死後100年以上が経った1741年が最古です。

本作は5幕構成で、伯爵のバートラムとバートラムに思いを寄せる孤児ヘレナの2人を中心に展開していきます。

バートラムは身分の低い人との結婚を嫌がってヘレナの求婚を退けますが、ベッドにいたのは実際には別の人だった「ベッドトリック」によって結婚せざるを得ない状況になりました。

負けを認めたバートラムに対し、国王は「終わりよければ全て良し」と言います。

本作は「喜劇」ではあるものの作品には暗さや重さも兼ね備えており、必ずしもハッピーエンドにはならないことから「問題劇」とも呼ばれています。

数々の名場面を世に出してきたシェイクスピア

シェイクスピアの作品は多様性に富んでいます。

史劇、悲劇、喜劇、そして喜劇の中でも喜劇なのに暗い「問題劇」と、バラエティーが豊かです。

そんな多様な作品からは数々の名場面も生まれました。

ハムレットの「To be, or not to be, that is the question」をはじめ、例を挙げればきりがありません。

この機会にシェイクスピアの豊かな世界観をシェイクスピアの作品から味わってみませんか。

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