「演劇の大会のために台本書かなきゃ」
「演劇の脚本ってどこから考えたらいいの?」
「映画やドラマの脚本とは違うの?」
そんなあなたに、演劇の脚本の書き方のコツをお伝えします。完璧な戯曲を書く必要はありません。まずは「最後まで書き切る」ところから始めましょう。
この記事の構成
1. 演劇の脚本と映画・ドラマの脚本の違い
2. どこから書き始めるか
3. 構成の基本(三幕構成・起承転結)
4. 台詞・ト書きの書き方
5. 推敲のコツ
6. もっと学ぶには
演劇の脚本と映画・ドラマの脚本は何が違う?
同じ「脚本」でも、演劇・映画・ドラマでは作法と発想が大きく違います。違いを押さえると、書き始めの方向性が見えてきます。
| 項目 | 演劇(戯曲) | 映画・ドラマ |
|---|---|---|
| 場面転換 | 制限が多い(舞台転換に物理的限界) | カット切り替えで自由 |
| 時間表現 | 暗転やセリフでまとめがち | カット・モンタージュ・字幕で自由 |
| 主役の表現 | 台詞・身体・空間が中心 | 映像・編集・音楽が補強 |
| 観客との距離 | 生で同じ空間にいる | カメラ越し |
| 1作品の長さ | 30分〜2時間程度の一発勝負 | 30分〜長期シリーズ |
演劇では映像表現に頼れない代わりに、「台詞の力」「場面の構成力」「俳優の身体表現」で物語を立ち上げます。だからこそ、脚本で人物が「何を言うか」「どう動くか」を明確に書くことが大切です。
どこから書き始める?
「何も思いつかない…」と固まってしまう人は、次のいずれかから始めてみてください。脚本は「最初の1ピース」がはまれば、自然と続きが書けるようになります。
1. 登場人物から書く
主人公と対立人物の2人だけでも構いません。年齢・職業・口癖・抱えている悩み・絶対に譲れないものを箇条書きでメモします。
例:
- 主人公: 28歳、地方公務員、絵を描くのが好きだが家族に隠している
- 対立人物: 35歳、東京の友人、起業を勧めにくる
この2人を1つの部屋に閉じ込めれば、すでに物語が動き始めます。
2. シチュエーション(状況)から書く
「あったらドラマが生まれる状況」を1行で書きます。
- 「葬式のあと、初めて顔を合わせた異母兄弟が遺言を読む」
- 「停電で閉じ込められたエレベーターに、別れた元恋人と一緒だった」
- 「明日告白する予定の相手が、自分の親友と帰っていく」
これだけで、「誰が」「何を」「どうしたいのか」が芋づる式に決まっていきます。
3. テーマ(問い)から書く
「自分が観客に投げかけたい問い」を1つ決めます。
- 家族でも分かりあえないことはあるのか?
- 本当の友達とは何か?
- 夢を諦めるのは負けなのか?
テーマがあると、書き進めるうちに迷っても「自分は何を伝えたかったのか」に立ち返ることができます。
構成の基本: 三幕構成と起承転結
30〜90分の演劇に最も向いている構成が「三幕構成」です。映画でも演劇でも使われる王道のフレームです。
- 第一幕(状況設定): 主人公が何者で、何を抱えているかを観客に伝える。日常を見せる。
- 第一幕の終わり(きっかけ): 主人公の日常を揺るがす出来事が起きる。
- 第二幕(対立): 主人公が問題を解決しようと動くが、次々と壁にぶつかる。
- 第二幕の終わり(最大の危機): 一番大きな壁、絶望の瞬間が訪れる。
- 第三幕(解決): 主人公が新たな決意で動き出し、物語が決着する。
日本人になじみのある「起承転結」も同じ枠組みで考えられます。三幕構成の方が「対立」と「危機」がはっきりするので、ドラマチックな展開を作りやすいです。
初めて書く方は、まず30分×三幕(各10分)から始めるのがおすすめです。短いほど構成が破綻しにくく、最後まで書き切れます。
台詞の書き方のコツ
説明台詞は避ける
「お父さん、僕は明日大学受験なんだ」のように、登場人物が「相手にとって既知の情報」を語るのはNG。観客に伝えたい情報は、行動や状況で示します。
本音と建前を使い分ける
登場人物は、本音をそのまま言葉にしないことの方が多いです。「言いたいけど言えない」「言いながら違うことを考えている」状態を描けると、リアルさと深みが出ます。
声に出して読む
書いた台詞は必ず声に出して読みましょう。「読みづらい」「言葉のリズムが悪い」と感じる箇所は、舞台でも違和感が出ます。
ト書きの書き方
ト書きとは、場面・行動・心情などを示す指示書きのことです。台詞の前後に必要に応じて書きます。
ト書きの基本ルール:
- 必要最小限に: 細かい動きまで書かない。演出家・俳優の解釈の余地を残す
- 映像表現は控える: 「カメラがゆっくり上がる」など映画的な書き方は避ける
- 場面の冒頭で必要な情報だけ: 時刻・場所・登場人物・季節などを簡潔に
例:
第一場 午後5時。古い和室。 ちゃぶ台の前に、母(60)が一人で座っている。 ふすまが開き、息子(28)が入ってくる。 息子「ただいま」 母「(顔を上げず)おかえり」
推敲のコツ
1度書き上げたら、必ず推敲します。推敲で意識すべき5つのポイント:
- 主人公は変化したか? 最初と最後で何かが変わっていれば物語として成立しています
- 説明台詞は減らせたか? 行動・状況で示せる情報は台詞から削る
- すべての登場人物に役割があるか? 必要のないキャラは合体or削除
- 音読してリズムは自然か? 引っかかる箇所はテンポを直す
- 誰に何を届けたいか? 最初に決めたテーマがブレていないか確認
もっと学ぶには
独学にも限界があります。脚本を本格的に学びたい方は、次のようなリソースを活用してみてください。
- 名作戯曲を読む: 平田オリザ・別役実・三谷幸喜・松田正隆など、現代日本の代表的劇作家の作品を読むのが一番の勉強
- 戯曲講座を受ける: ストアカで脚本(シナリオ)を学ぶで紹介しているようなオンライン講座を活用
- 戯曲賞に応募する: OMS戯曲賞などに応募することで、締切とフィードバックの機会が得られる
- 専門学校・大学で学ぶ: 大阪府で演劇を学べる専門学校・大学・大学院もあわせて参考に
- 関連書籍を読む: 平田オリザ『わかりあえないことから』は脚本家にも示唆に富む
まとめ
演劇の脚本を書くコツをまとめます。
- 映像表現に頼らず、台詞と身体表現で物語を立てる
- 「人物」「状況」「テーマ」のどれか1つから書き始める
- 三幕構成で30分から書いてみる
- 説明台詞を避け、本音と建前を使い分ける
- ト書きは必要最小限に
- 必ず音読して推敲する
「ちゃんとした傑作」を目指す必要はありません。まずは1本書き切ること。書き終えて初めて、自分の癖と課題が見えてきます。
あなたの脚本が舞台に立つ日を楽しみにしています。

